発達障害(ADHD/ASD/LD)は目に見えないからわかりにくい
令和になって頻繁に注目されるようになった「発達障害」。
言葉はよく目にするものの、発達障害がどういったものなのか分かっていない人の方が多いと思います。「周りに発達障害の人がいないから分からない」と思われがちですが、意外と身近にいるのに気づいていないだけかもしれません。
仕事が円滑に回らないとき、たいてい職場内に意思疎通がうまくいかない人がいると思います。
例えば、
「指示したことと違う作業をしている」
「10分でできる作業に30分もかかっている」
伝えたことと違う作業をしていたり、仕事が極端に遅い人がいたらその人は発達障害の可能性が高いです。
発達障害はADHD、ASD、LDといったものがあり、1つの障害の特性だけが強く出る人もいれば複数併発している人も多くいます。併発すると各々の特性がぶつかり矛盾するところが出てくるため1つの行動にとても時間がかかります。
例えばADHDは好奇心が旺盛でいろいろなことに手を出すものの、集中力が続かなかったり、飽きっぽく長続きしません。思いつくとすぐ行動に移すため最初のうちは好印象でエネルギッシュに見られます。
それに対して、ASDは1点集中型で興味があることだけは過集中を発揮します。一度集中すると周りが見えなくなり、声をかけられても気づけないほどに集中します。過集中のときに声をかけられると気づけず返事をしないASDが無視したと思われやすく、そこから人間関係がギクシャクすることもあります。
ADHD、ASDの両方の特性を兼ね備えた併発型だと、仕事でとてつもなく困ったことが起こります。
優先順位は頭では分かっているのになぜかその通りにできないのです。先にやらなくてはいけないタスクから始めたとしても興味のないことだと集中力が持続できないため中断して後回しにします。
代わりに、自分のやりやすい優先順位の低いタスクから片づけようとします。すると、その日に終わらせないといけない大事な作業が滞り、期日までに終わらないことはよくあります。
発達障害の人が「仕事が遅い」「仕事ができない」と思われやすい職種はマルチタスクの多い事務仕事や、テキパキ動かないといけない体力や気遣いが必要な職種(飲食業、工場など)です。
ASDの特性もあると手を動かす前に頭の中でその作業をする理由を考えて納得してからでないと取りかかれないため、かなり時間がかかります。
「この作業はどんな意味があるのか」などと考えなくても良いことが頭の中でグルグル回っていることもあります。
毎日のように顔を合わせて仕事をすることになれば定型発達の人は発達障害の人に対して違和感を覚えるでしょう。
雑談(特に悪口やうわさ話)が苦手なADHDは仕事以外の話になると話がかみあわず「ちょっと変わってる人」と思われやすいです。チームワークが重視される業務だと周りに合わせようと頑張っているのになぜか置いてけぼりになったりします。
発達障害があると脳機能の欠陥により仕事の段取りが悪い、優先順位をつけたとしても計画通りに進まない(結果仕事が遅延する)、指示を的確に理解できない(勘違いする)等、様々なズレが生じます。
一生懸命頑張っても周囲と歩調が合わせられず(ペースが追いつかない)一人だけ浮いてしまうこともよくあります。周囲を困惑させる(本人も困惑する)ことが多いので本人も非常に生きづらいと感じています。
普通の人なら手際よくこなせる雑用がかなり苦手で時間がかかる、上手に片付けができないため、雑用を素早くこなさないといけない庶務や事務、常に気遣いが求められる秘書などはADHDには不向きでしょう。
発達障害は病気ではなく生まれつきの脳の特性と言われています。五体満足で見た目は普通なので少し話した程度ではまったく気づかれません。
本人がいちばん周りとの違和感を感じて困る場面が多いのに、身内や親族にも似た特性があり変わってる人が多いため、身内からは何のケアもなく社会に放り出されやすいです。社会に出てからも困りごとが多すぎて適応しきれないことに困り果てて二次障害(鬱、適応障害等)を発症することになります。
ADHDが職場で叱責されやすいのはなぜ?
発達障害当事者が叱責されやすい場所は職場です。
職場は業務効率を重視するため、手際が悪かったりケアレスミスが多いと叱責されます。
発達障害(ADHD・ASD)が職場で上司から注意される言葉がこちら。
「段取りが悪い」
「優先順位考えて」
「時間かけすぎ」
「ちゃんと確認した?」
「同じミスはしないように」
「なんですぐ聞いてくれなかったの?」
ADHDにとって段取りが悪いのは今に始まったことではなく子供の頃からです。
ミスをしないように慎重に取り組むほど普通の人の倍以上に時間がかかります。
急ぎで行わなければならない業務だとテンパりやすくケアレスミスを起こしやすいです。
上司が忙しそうだとタイミングがつかめずなかなか話しかけられないのに、テンパりすぎると話しかけすぎて「調べてから聞いて!」と匙を投げられることもあります。そんなADHDの両極端なところが「空気が読めない」と言われる所以なのかと思います。
ADHDは根がまじめなので、周りに迷惑をかけないために120%の力で必死に頑張るわりにうまくいかないことが多いです。そんな自分自身にイライラし、同じようなミスが積み重なるので自己嫌悪に陥ります。
発達障害かどうかは見た目では分かりません。業務スピードが遅かったりケアレスミスを繰り返すため、後から期待外れだったとガッカリされることがとても多いです。
ADHDがクローズ就業で勤めた場合、普通の人と同じようにできるものと期待されるため、万が一苦手な業務に就くと入ってから仕事のできなさが露呈して周囲に迷惑をかけてしまうことになります。
それでも当事者がクローズ就業にこだわる理由は、ADHDは世間では悪いイメージしか浸透しておらず、明かしても理解されるどころか排除される可能性があることを当事者自身で分かっているからです。
困りごとを伝えても迷惑がられるだけで配慮さえ期待できないため、発達障害グレーなら職場にリスクを冒してまで明かしたがりません(陰口や嘲笑されて虐げられるだけでダメージが想像に難くない)。
発達障害の人は幼少期から違和感を常に感じつつも、無理して普通に合わせようと擬態化して良い子にしてきた人ほど、大人になるまで障害の特性を見過ごされてしまいます。
社会に出てからうまくいかないことが多すぎて「自分は社会不適合なのかもしれない」と気づきます。
けれど、解決策もないため二次障害(鬱・適応障害・双極性障害)に発展するケースが多いです。